【読了】『メディア化する企業はなぜ強いのか?』- 企業がメディア化する方法・とるべきスタンス
メディア化する企業はなぜ強いのか? ?フリー、シェア、ソーシャルで利益をあげる新常識 (生きる技術!叢書)
- 作者: 小林弘人
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2011/11/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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★★★★☆
【一言サマリー】
このインターネットの時代、企業はWEB上でメディア化して顧客とコミュニケーションを取るべきである。
【個人的な解説】
企業のマーケティングや広報に関わる人は読むべきかもしれないとてもとても良質な本。コンテンツマーケティングやオウンドメディアといったキーワードに最近敏感な私にとって、これもそれらについての解説本なのかと思っていました。実際には、現代のメディア全体を捉え、顧客を獲得したい企業はどうそれらと向き合い、活用していくべきなのかということが網羅的に記されています。単なる個のhow toにとどまらず、とるべきスタンスが身に付く内容になっています。
先日『インバウンドマーケティング』という本を読んで、これは本当にあまり面白くなくてこの手の本はちょっと敬遠していたのですが、『メディア化・・・』は、あれだけヒットするWEBメディアをいくつも生み出している小林氏だからこそ書ける内容で非常に納得感のあるものになっているのだなあと思いました。知見が広く、これこそ1000円以上出す価値のある本だよなあと感じた次第です。
【学び(備忘録として。主に引用)】
ユーザーとの絆を深める究極のマーケティング=
①企業自らがかつての出版社や放送局のようにメディア化し、
②自社の伝えたいことをコンテンツ化して発信、
③そしてそれをソーシャルメディアの波に載せてユーザーに届けること
コンテンツ・キュレーション・マーケティング
キュレーションの手法
①アグリゲーション(情報の集成)
②ディスティレーション(蒸留):エッセンスを抽出し表現を単純化して提示
③エレベーション(上昇):ツイッターのつぶやきなどから大きなトレンドを掴む
④マッシュアップ:旧概念に新しい文脈を与える
⑤クロノロジー(年表):時系列で情報整理
アドボカシー・マーケティング
「真実はいずれ顧客に知り尽くされる」から、ユーザー視点で情報を提供し、顧客から信頼を得、支持を得ることが大事
メディア化のやりかた
デマンドジェネレーション型メディア=ターゲット別の既存顧客を別サービスに誘導する
ターゲット別に企業メディアを組成するメディア化戦略。お客さんのLTV(ライフタイムバリュー)に合わせてメディア化戦略を展開し、そのお客さんの興味をずっとつなぎ止め続ける方法論を考える。
リードジェネレーション=見込み顧客を獲得する
商品・サービスをまだ利用していないユーザー層にそれとなく価値を気づかせてあげる作業→ニッチなコンタクトポイントを数多く用意する
エンゲージメント、カスタマー・リレーション・マーケティング=自社顧客を囲い込む
売るだけでなく、買った後もその顧客をファン化させ、自社メディア、もしくはソーシャルメディア上に誘導し続ける。さらに、それらの顧客に自社の新製品やサービスをネット上で口コミしてもらうよう促す。
ブランデッド・コンテンツ・マーケティング、パーセプションチェンジ=自社の優位性を認知させる
企業のストーリー戦略を重視。価格競争に巻き込まれずいかにして他社と違うのかを訴求する。あるいはマスイメージと実態とのギャップを埋める。
アンブレラ・メディア
自社ドメイン発で、業界全部を覆ってしまうようなメディアをつくりコンテンツを発信する
ブティック型メディア
=専門誌の進化系
フォーキャスト・メディア化戦略
それが欲しいと思う人たちのニーズを先回りし、検索先に目的のランディングページないしは、メディアを創っておくことで、これまでニッチすぎて売れなかったものが売れる可能性が高まる。
データベース連動型メディア化戦略
オンライン上での顧客の過去履歴を参照し、将来興味を喚起するであろうという推論に基づき、その顧客が興味をもちそうなコンテンツを個別にレコメンドするマーケティング手法
クチコミ・マーケティング
②バイラル・マーケティング:急激に人から人へ伝えられていくように設計されたメッセージをつくる
③コミュニティ・マーケティング:その企業ブランドについての興味を共有するようなニッチなテーマで繋がったミュニティに、ツール、コンテンツ、情報を渡して手助けしてあげる
④草の根マーケティング:ボランティアをs組織し、それを動機づけて、個人や地域などを繋げる
⑤エバンジェリスト・マーケティング:自社について語ってくれるエバンジェリストやコミュニティ内でリーダーシップを発揮できるボランティアを育て、支持する
⑥プロダクト・シーディング:正しいときに正しい人へ正しい製品を渡す。情報や試供品を影響力のある個人に提供する
⑦インフルエンサー・マーケティング
⑧コーズ・マーケティング=人々からの尊敬や共感を育て、支援を求めるなど社会運動として行う
⑨カンバセーション・クリエーション:クチコミが発生するようにデザインされた楽しい広告、メール、プロモーション
⑩ブランド・ブロギング:ブログで活動を綴り、ブロガーたちのコミュニティに参加
⑪委託プログラム:満足した顧客がほかの人たちにお勧めできるよう、ツールやプログラムを用意する
ツイッターの活用
ツイート発信のタイプ
①ピアモデル型:担当者が記名で発信、担当者_社名アカウント
②ロゴ・アカウント型:複数、もしくは専任が社名で発信
③コミュニティ主導型
つぶやきスタイル
①ニュースリリース型
②問題解決型:健作氏、困っているユーザーがいたら解決策を提供
③コミュニティ寄与型:特定のコミュニティに大使、情報提供や支援を行う
④会話中心型:自社や商品、扱うサービス等意外について
⑤テーマ型・イベント中心型:話題を提供、もしくは募集してコミュニティ組成
⑥bot
ARLAS
Awareness→Recommendation→Like it!→Action→Share
ソーシャルメディアを駆使したマーケティングでは、これまでのようにユーザー自身が能動性を発揮するというよりも、自分が信頼できるソーシャルグラフからの推薦が引き金を引き、そのユーザーの消費行動に影響を与える可能性が高いでしょう。
ソーシャルグラフを活用してアプリをつくる
①モチベーション促進型:会員サービスであれば、ユーザーのアクティビティを可視化させるもの。ステータス表示や活動の履歴の表示など。
②販売・予約
③共有:自社商品・サービスに関する物やデジタル・コンテンツを共有促進。
④ロケーション&アクティビティ:チェックイン機能を活用したもの
⑤検索
企業が用いるべき「オープン」
①開放性:誰にでもアクセスが開かれていること
②透明性:誰にでも情報が開示されていること
③改変性:より良く改変するために誰にでも改変の手段と権限が解放されていること
④共有性:そこでの成果を一定のルールに基づき用いることができるように設計されていること
⑤改善性:もし間違ったらそれについて議論し、正しい目的に向けて常に修復、もしくは改善しようという努力が行われること
アナウンスからウィービングへ
一方的に何かを伝え、マスメディア等を通じて認知を獲得するアナウンス的やり方ではなく、コミュニティに受け入れられるためのコミュニケーションが重要。
個々人によって違う情報取得のストリームがあるが、あらゆるストリームにコンテンツを適合かしていく=「偏在するブランディング」が大切になってくる。
【雑感】
企業がメディア化する理由はいろいろ有ると思います。単純なSEO対策と考えるのはおそらくもったいないでしょう。「コンテンツマーケティング」というバズワードに惑わされて企業ブログを立ち上げるも結果コストばかりかかって成果に結びつかないということなんてしょっちゅうあると聞きます。Search Engine Optimization以上の意味がそこにはあるということです。
ほとんどの企業のマーケティング担当者は、WEB上にいる潜在ユーザーと接点を築き、顧客に変えていくというミッションを担うべきであるということは、もはや常識だと思います。なぜなら、かなり高い確立でそこに顧客になりうるべきユーザーがいるからです。
(関連記事:
【読了】『USERS』 - 顧客主義ではなくユーザー主義! - Create Something New with Internal Conflicts, then Learn
)
そこで自社オウンドのメディア、あるいはソーシャルメディアなどなどを活用していかに潜在ユーザーコミュニケーションをとっていけばいいのか。そこに企業の明暗を分ける鍵が眠っていると私は思いますが、そのヒントがたっぷり詰まった本になっています。