【読了】『プラットフォームビジネス最前線』 — プラットフォームビジネスとは何で、どうして生まれて、どんな特徴で、何に寄与していくのか
プラットフォームビジネス最前線 26の分野を図解とデータで徹底解剖
- 作者: 富士通総研,早稲田大学ビジネススクール根来研究室,根来龍之
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2013/12/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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★★★☆☆
【個人的な解説】
プラットフォームビジネスについて、アカデミックな定義から最新のビジネス事例を元にした解説まで、幅広くかつ丁寧に取り上げられている。
良くも悪くも事例はかなり幅広く、個人的には掘り下げが若干物足りないものの、信頼のおける一冊だと思う。プラットフォームビジネスといってもかなり幅広いことが、この本を読んで理解できるので、その中でも掘り下げたい分野が見つかったひとは関連書籍を読めば良い。といっても、この本ほど詳しく記している書があるのかどうか不明だが。
ランサーズ、LINE、楽天市場といったところのインタビューも掲載されていて、あらゆるプラットフォームビジネス事業者にとって参考になる内容だと思う。
【学び(基本的に引用)】
プラットフォームビジネスの前提となる産業構造:レイヤー構造
「レイヤー構造」・・・プラットフォームビジネスはレイヤー構造型の産業構造を前提として成り立つ。レイヤー構造では、最終ユーザーは、各レイヤーの製品・サービスを直接選択することが可能である。
「産業のモジュール化」・・・モジュールとは「<事前に決められたルールに従った外部との接合基準>をいじすれば 部分設計可能となる構成要素」のことであり、産業のモジュール化とは、「産業内で独立に活動する各ビジネス要素を適宜結合してビジネスができるようになる」ことである。
この「産業のモジュール化」と、「ネット化」によって空間と時間の成約からビジネスが解放されたことで、「レイヤー構造化」が進んだ。
プラットフォームの2種類
1. 基盤型プラットフォーム
「『製品・サービス』をプラットフォーム事業者が提供し、それを前提とした補完製品・サービスが存在する」
例:ゲーム機とゲームソフトなど
2. 媒介型プラットフォーム
「『製品・サービス』をプラットフォーム事業者が提供し、それを前提とした補完製品・サービスが存在する」点は1と同じ。ユーザーは、「補完プレイヤーの提供する製品/サービス/情報を、媒介型プラットフォームを通じて」購入し、補完プレイヤーから直接購入するのではない。
例:予約サイト、比較サイト、オークションサイト、決済サービス etc.
プラットフォームビジネスの特徴
「ネットワーク外部性」・・・ユーザーが多ければ多いほど、価値が高くなるというようなこと。
「WTA現象」・・・先発性のあるサービス等は一人勝ちしやすい。収穫逓増の現象が続けば、さらに一人勝ちを強める。
「マルチホーミング」・・・ユーザーや補完プレイヤーが複数のプラットフォームを利用すること。先行のプラットフォームは、ユーザーたちになるべく他のプラットフォームを使わせないようにし、後発は、マルチホーミングコストを下げることが大事。
「スイッチングコスト」・・・利用しているサービスを変更するときのコスト。先発サービスはスイッチングコストを高め、後発は低くすることが大事。
収益モデル
1. 仲介手数料
2. プラットフォームの参加料
3. データ・分析サービス提供料(例:@COSMEなど)
その他の特徴
「ロングテール現象」・・・ニッチ商品の販売額の合計がベストセラー商品の販売額合計を上回る現象。プラットフォームビジネスで起きやすい。
「グローバルニッチ」・・・プラットフォーム上にあるニッチ商品はグローバルに展開するだけでなく、指数関数的に拡大する可能性がある。
既存バリューチェーンの崩壊
・誰でも制作者・提供者になれる
・バリューチェーンの中抜きが進む
・新しいバイイングパワーが生まれる・・・ネット上で個人が繋がることによるもの
・「プロシューマー化」・・・消費者の意見が製品開発に取り入れられる
プラットフォームが成功するために
・ネットワーク効果を前提とした戦略づくり
・補完製品・補完プレーヤーのマネジメント
・補完プレーヤーのインセンティブの仕組みづくり
・補完製品の品質や数のコントロール
・ホーミングコストのマネジメント
・競争相手との競争&協調の戦略
・アライアンス戦略
「コトづくり」とプラットフォーム
1. 「使用・サービス時における”コトづくり”」・・・例:appleのiPodとiTunes
2. 「生産・創造時における”コトづくり”」・・・例:モノづくりプラットフォーム、コ・クリエーション
などなど。
【雑感】
概念的な部分だけをまとめた。あとはたくさんの事例が載っているので、興味のあるところだけ拾い読みしても参考になると思う。プラットフォームビジネスはネット時代と密接に絡んでいて、考えてみると最近の新興企業はプラットフォームビジネスばっかりなんじゃないのかという気がした。ネットでプラットフォームをつくること自体は、困難なことではないし、誰もが思いつく内容であると思う。例えば、業界内で散り散りバラバラになっているものをまとめたいっていう発想は至極当然の成り行きである気がするし。だからこそ競合が次々生まれたり、ビジネスとして維持していくことの難しさというのもあるのだと思う。
個人的にはやはり、そのプラットフォームによってどんなイノベーションが生まれていくのかという部分に注目していきたい。そういう意味で、”「コトづくり」プラットフォーム”に関してはさらに深堀りしていきたいと思う。